give me...


5

 寝室においてある高岡のデスクの、一番下の引き出しを、遥はひそかに四次元●ケットと呼んでいる。いつ入れたのだか不明の妙な道具が、次々と出てくるからだが……子供の夢と大人の玩具を一緒くたにするのはいかがなものだろう。
 普段は鍵がかかっているそこが開けられるのは、たいてい高岡の虫の居所が悪い時で、さらに「お仕置き」とくれば、引き出しの在庫確認作業のようになってくるのはいつものことだった。


 ベッドの上でうつぶせにされた遥は、身体の内部から起こる振動に、ときおりかすかなあえぎ声をあげていた。後ろにローターを挿入され、そのまだるっこしい振動に攻められ続けて数分。もっと大きな刺激を求めて腰は揺れ、勃ちあがった自分自身をシーツにこすりつけているのだが、ほしいのはそんな刺激ではなかった。
 遥は涙目で、服を脱いですらいない恋人を見上げる。
「もっ、やだって……もっと、ちゃんと……っ、何っ?」
「ちゃんと何?」
「違っ、や、そっちはやだっ」
「やだって。男なんだから、こっちもしてほしいだろ? ケツだけでそんなよがるなよ」
「よがってないっ……あっ」
 男の手が、遥の中心を包み込み、くいくいと扱く。そして手が離れたと思ったら、あっという間にそれにコンドームを装着してしまっていた。
 それだけで、相手が何をしようとしているかわかるあたりが悲しいのだが。
「やだって、やだ!」
「遥、ベッドの上で嫌って言われても、もっとしてって言ってるようにしか聞こえねえよ」
「へんたい……うぁっ」
 噛まれた。
 ひょいと身体を裏返されて、妙に可愛らしいコンドームをつけられているアレを!……もちろん軽く歯を立てた程度だが。
「な、な、何すんだよっ」
「声裏返るほどのことか? 大丈夫だろ、ゴムの上からだし」
「この薄いのが何の防御に……っ、な、もういいかげんローター……っ」
「はずせって? よく言うよ、今から着けるところだろ?」
「うぅ……」
 そんなことをやっている間にも、身体の中で振動は続いていて、動くたび、少し力を込めるたびに新たな快感を呼び起こしている。
「ああ、それともバイブのほうがよかったか?」
「よくないっ」
 ゴムの上から傷テープで貼り付けられるのは、小型のローター。そちらのリモコンスイッチがonにされた瞬間、遥の身体が小さく跳ねた。
「あっ、んやぁぁっ……」
「おっ、まだイクなよ」
 敏感な場所に強すぎるほどの振動を与えられて、一気に絶頂まで駆け上ろうとした瞬間、スイッチが切られる。
「や……もぅ、やだって………」
 逃した快感に、小さく身を震わす遥の背に、男がキスをする。
 それから伸ばされた手が、遥の硬く立ち上がったものにさらなる悪戯を施して。
「さてと。準備完了だな」
「どっ、こが……ひぁっ」
 再び入れられたスイッチに、遥は悲鳴を上げた。


「んぁ、あぁ、やっ……も、ひっ、あっ」
 たえまなく続く自分のあえぎ声が、どこか向こうのほうから聞こえてきているような感じだった。
 与えられる刺激だけがすべての感覚を支配し、快感と苦痛でぐちゃぐちゃになった頭の中には、早くこの状況から解放されたいと言う願いしかない。
 痛いほどに存在を主張している遥の欲望は、革紐か何かで根元を絞められていて、体内にあふれかえる熱を吐き出すことを許されていない。
「あ、い、いおり、いおりっ、んっ……ねっ、これっ、はず……し、てっ…」
「ん、どれ?」
「ひっ、嫌ぁぁっ」
 どれ、と言いながら、ローターに代えて埋め込んだバイブで、中をぐりぐりと刺激する。敏感な場所をえぐられて、遥は一瞬、頭の中がスパークしたように感じ、そのまま半ば意識を飛ばしてぐったりした。
「おいおい、まだ早いだろう」
 こつんと額が突き合わされて、かすんだ視界に男の顔のアップが映る。際限なく動いていた玩具の振動が止まって、遥は息を弾ませながら、苦痛から解放された安堵感にため息を漏らした。
 高岡は、静かに遥を見下ろしていた。
「これ、はずしてほしいか」
 もう良いのやら痛いのやらわからなくなってきている性器に触れられて、遥の身体がひくっと震える。
「ちが……て………はずして……」
「ん?」
「手……」
「ああ、そっち?」
 身体をよじって、拘束されたままの腕をどうにかしてくれるように訴えると、高岡はひょいと眉をつりあげて、それからかすかに笑った。
 抱き起こされて、革の手錠がはずされる。
「これでいいのか?」
「あ、ん……」
 男の胸に頭をこすりつけて、解放された手を広い胸にまわして、遥は唇を噛んだ。
 嫌だ、いつものパターンだ。
「遥?」
「伊織、これ脱げよ」
 うつむいたまま、シャツのボタンに手をかける。抱きついたときに素肌どうしでないのは、どうにも気に食わなかった。
「はいはい。まだお仕置き中だと思ったんだけどな」
「どーでもいいだろっ、そんなこと、いつでも、言うこときいてるっ……」
「そうだな」
 唇が重ねられ、あやすように浅いキスがくりかえされる。
 遥は、脱がしかけた高岡のシャツの袖を握りしめていた。
 くいと敏感な胸の突起を押されて、かすかにあえぐ。
「伊織……」
「それで、こっちは取らなくていいのか?」
「先に脱げよ」
「色気ねえなあ、その言い方」
 怒ったように言い捨てる遥に苦笑しながら、高岡が遥の身体を離す。その間に、遥は自分で自分の性器につけられた物を全部取っ払った。先走りで濡れたゴムも含めて、腹が立つのでカーペットに放り出す。
 次にバイブ、といきたいところだったが、衣服を脱ぎ終えた高岡がこちらを見ていたので、それは渋々諦めた。
「まったく、しょうがないな。この程度で」
「何がだよっ」
「これくらいで泣くなって」
「泣いてないだろっ」
「そうか?」
 顔が近づけられて、頬をぺろりと舐められる。実際、涙がこぼれているのは自分でもわかっていたので、遥は顔をしかめてそっぽを向いた。
 泣けてきてしまうのはたぶん、泣いたほうが高岡が優しいことを、脳が覚えているからだ。とはいえ、嫌なことをされているときでも、虐められたあとでちょっと優しくされたときでも、遥の涙腺はいとも簡単に壊れるのだが。
 高岡に言わせると調教の成果らしいのだが……それは何かの役に立つのだろうか。
「まあ、いいけどな。前戯はここまでってことで」
「……あれが前戯……わっ」
「そりゃそうだろ」
「や、んぁっ」
 無造作に遥を押し倒すと、高岡はさらに無造作に遥の股を割り、深々と挿入されたままだったバイブを抜き取る。
「いい顔だな」
 抜き取られるときの刺激に喘いだ遥の頬を、大きな手が撫でた。そして間をおかずに、熱いものが遥の中へ押し入ってくる。
「んっ…はぁっ」
 待ちかねた熱の圧迫感に息をつき、遥は高岡の首に手をかけて引き寄せる。
 男の黒髪の中に指を滑らせると、強い視線がふと細められた。自然と唇を寄せあって、それと同時にゆっくりと力強い動きがはじまる。
「んっ、んぁっ……やっ、ああっ」
 遥のすべてを知り尽くした男のセックスは、その気になれば一瞬で遥の理性を奪い去る。甘い波にさらわれた遥の身体は、さっきまでとはくらべものにならないほどリラックスして、快楽を受け入れていた。
「んっ、あっっ、もっと……」
「まったく、お仕置きはどこ行ったんだろうな」
「あ、だっ、だって、俺、悪いことしてな……ぁっ」
 胸の赤く色づいた突起をきゅっと摘み上げられて、遥の身体が弓なりになる。そのまま指で転がされ、遥はいやいやをするように首を振った。
「まあいいさ。朝まで寝かせてやらないから。ちゃんと付き合えよ」
「やぁっ、だめ、んっ……もぅ、イク………」
「いけよ。何度でも達かせてやる」
 言いながら、奥まで容赦なく突き上げる動きに、遥は全身を震わせて、さっきまで堪えさせられていた熱を吐き出した。

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