「ちょっ、ネイゼル、離して」
「いやです」
話はまとまったし、キスと抱擁でレイ・セリュウムの心はふかふかで、とろけていきそうなくらいなのに、身体を熱くさせる原因がどいてくれない。
なんだか、さっきまでキスに酔っていた自分が恥ずかしくなって、もがいてもたら、ますますきつく抱きしめられた。
「言ったでしょう。ただでは帰さないと」
「だっ」
だって、キスならもうしたじゃないか、と思った国王は、だいぶお子様だった。
近づいてくる顔に、そういえば、と思い出す。
幼い頃、何度もネイゼルとキスをした。お互い小さな子供だったから、当然お子様のキスだったけれど、いつ頃だったか、舌を入れられて泣いたような。
「おまえ、ほんと、昔っから意地悪だ」
「そういう私に求婚されてたあなたは、悪趣味ですねえ」
そう言って笑う男は、昔の面影はそのままに、大人になった。
確かに悪趣味かもしれないと、余計な方向へ向かいかけた思考は、ネイゼルの無遠慮な手にさえぎられた。
「あっ、やっ」
身体をまさぐってくる手の強さに、思わず声を上げて、あわててふさごうとした唇は、いつしか奪われていた。
「だめ、ネイゼ……ん、そんなの……」
「大丈夫だから、いい子にして」
「や、あっあ……」
さすがに身の危険を感じてあげた声は、欲情した男には甘い誘いにしか聞こえないもので。
ネイゼルは、拒絶の言葉を吐こうとする唇をまたふさいで、いやらしく身体を押し付ける。
レイ・セリュウムの足の間に、自分の片足を押し込むような姿勢で、壁と自分とで相手が逃れられないのをいいことに。
「だ、だめ、あ……だめだ、ネイゼル、だめ」
互いの身体にはさまれたものが次第に熱くなってくるのを実感して、ネイゼルは艶笑し、レイ・セリュウムは頬を染めた。
「我慢できなくなりそうですよ」
「がっ……」
どこが我慢してるんだ? そう言い返そうとした瞬間、ドレスの裾を思い切りめくり上げられて、レイ・セリュウムは絶句した。
下着越し、とても生々しいあたりに手が触れて、頭の中が真っ白になった。
「ひどい」
何がなにやらわからないうちに、とりあえず自分だけ気持ちよくなったらしいのは確かなのだが、事が終わって、レイ・セリュウムはソファに座ってむくれていた。
「怒らないで」
なぜかやけに機嫌の良いネイゼルに、額にちゅっとされて、嬉しいやら恥ずかしいやら腹が立つやら、よくわからない。
調子づいた唇は、さらに眉間やまぶた、頬に落とされて。
「戦が終わって落ち着いたら、ね」
「ね?」
「ね」
言う気はないらしい、落ち着いたら、の先のことに、なんとなく不安を覚えつつレイ・セリュウムは隣に座ったネイゼルの肩にもたれかかった。
「ほんと、ネイゼルって、昔から性悪だ」
「愛してますよ」
ふふっと笑いながら返されて、レイ・セリュウムは、幼い子供のように唇を尖らせた。
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