living on the edge



11.


 俺は背後から貫かれ、シーツに顔を押しつけて絶え間なく細い声を上げ続けていた。
 もういい加減にしてくれ、というくらいまで指で慣らされたのに、男を受け入れたそこはやっぱりきついし痛い。その圧倒的な存在感はただごとじゃなくて、苦しさに勝手に涙が出た。それなのに男のものが中を行き来するたびに、得体の知れない感覚が尾てい骨から脳天に通り抜けていくような。
「やだ、も……やめ……」
 最初は、声をこらえようという意地も多少あったと思うんだけど、入れられてしまってからはもう半泣きで、揺さぶられながら何度も「やだ」とか「やめろ」とか喘いでいた……そう、それはどう考えても甘い喘ぎ声でしかなかった……けど、その程度でやめてもらえるなら、最初からこんなことにはなってない。
 身体に力が入らなくて、まあ、肛門は急所だって言うしな、とかくだらないことがなぜか頭の中を通過していったりして、だいたいあんなところにあんなものが入ると思うほうがおかしい、と思ったけど、現にそれを実践されてる身で否定したって仕方がないと自分に突っ込んだりして。もう半分崩れ落ちそうになっている俺の腰を、高岡はしっかりと抱え上げ、ぐるりと側壁を広げるように腰を動かした。
「やぁ……」
「ちょっとは感じてきただろう?」
 低い声が、少しかすれて色を含んでいた。問いかけと同時に、さっきから放置されたっきりだった俺のに高岡の手が伸びて、するりとなで上げられた。
「ひあっ」
 変な声が漏れて、でもそれにかまっている余裕もなく、身体に埋め込まれた高岡のが俺をまた攻め立てはじめて。
 苦しさの中に快感が混ざり始めた頃にはもう、俺は訳がわからなくなっていた。
「どうしてほしい?」
「やああっ」
 俺をからかうように、高岡が中をかきまぜる。俺自身をもてあそぶ手が、先のほうをぐりぐりとこすって、刺激の強さに悲鳴が出た。
「ほら、言わないとわからないだろ?」
「あ、やるなら、ちゃんと……っ」
「ちゃんと、何?」
「ちゃんと、こすって」
「こするって、ここを?」
 俺の中に埋められた凶器が、内壁をこすりたてて、俺はまた細い声をあげた。
「ちがぅ……!」
 もどかしさに、自分で股間に手を伸ばしたら、あっさりその手をつかまえられた。
「駄目だろう、自分でするのは。ちゃんと気持ちよくさせてやるから」
 いったん抜かれて、仰向けに返され、また挿入される。その大きさに慣らされていたせいか、最初よりずっとスムーズな挿入だった。男に見下ろされている感覚がたまらなくて、俺は腕で顔を隠して熱い呼気を吐き出した。
 高岡がくすりと笑って、抱えた俺の足に軽く口づけた。
「なっ」
 俺がなんかびっくりして見上げると、ばちりと目が合う。高岡は、艶めいた表情でにやりと唇をゆがめた。
「あ……」
「覚悟しろ。俺がいないと耐えられない身体にしてやるよ」
 そのあんまりな言葉に、背筋がぞくりとして、でも俺は高岡から目を離せなくなっていた。


 その後、何度やったのだか覚えてない。
 後ろを犯され、前を弄られながら絶頂を迎えてぐったりしてしまった俺を、高岡は解放してはくれなかった。それが、前日と大きく違ったことだ。
 俺のものは高岡の容赦ない攻めでまた立ち上がらされ、強制的な快楽の中に放り込まれた。
 あんな感覚、知らなかった。
 女となら、何人の相手と寝たかおぼえてもいない。年上の、熟練のおねーさんとあれこれハードなことを試してみたこともある。けど、そんなものは全部吹っ飛ぶほどの圧倒的な感覚に支配されて、俺は荒々しい波の中で溺れるしかなかった。
 溺れて、息ができなくて、苦しくて…………怖くて。頭の中はもうとっくの昔に真っ白で、何も考えられやしなくて、促されるままに行為をねだり、本能のままに腰を振って。
 淫らな言葉なら、いくらでも言えた。恥は、わりと早い段階で捨て去っていたから。でも、かろうじて残った意地で、俺は本当に言いたかったただ一言を飲み込んでいたんだと思う。

 …………助けて!

 その、何より切実な叫びを。


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