living on the edge



6.


「な、離せっ」
 暴れる俺を、強引にリビングのソファの上に押し倒した高岡は、そのまま俺の首を掴んでソファに押し付けた。
「おとなしくしておけ。俺はおまえを逃がすつもりはないからな」
 耳元に、まるで睦言をささやくような調子で告げられる。
「だれがっ、そんなこと言われておとなしくなれるかっつーの!」
 言いながらも、どうしようもなかった。首は締められるし、両手は手錠をがちゃがちゃ言わせるばかりで役に立たないし、でかい男が上に乗りかかってるし。
 暴れれば暴れるだけ、身体が痛む。まだ身体中、結構痛いってのに。
 覆いかぶさるように近づいてくる高岡から顔をそらすと、耳をつっと舐められた。そして唇で軽く食まれる。
「やめ……」
 ぞくっと背筋に電気が走って、それが悪寒だか快感だかわからなかったけれど、俺はとっさに両手で高岡の顔をどけようとした。
 両手が繋がっているおかげで、高岡の片手でそれをどけられ、ばんざいの格好で押さえつけられてしまい、さらには頭もさっきまで首を押さえてたほうの手で押さえられた。
「耳、結構弱いみたいだな」
 低い声が、耳に直接送り込まれて、身体が震える。確かに弱いかもしれないと、思わず納得しそうになった。
 しばらく耳に集中していた唇がすっとずれて、顎に舌が這わされる。舌は首筋をたどって降りていったかと思うと、今度はあがってきて、だらしなく開いていた俺の唇を軽く吸った。
「可愛いな」
 高岡が、薄く笑って言う。
 俺は、よくわからなくて高岡を見上げた。俺が逃げようとしたから怒っているのかと思っていたんだけど、どうもそんな感じでもない。
 高岡は、純粋に俺をいじって楽しんでるように見えた。
 実際、そうだったんだろうけど。
 高岡はだいぶ抵抗の弱まった俺を抱き起こし、俺を後ろから抱えるようにして座りなおした。男の股の間に収められて、裸の背中に男の体温を感じて――何しろ俺はさっきTシャツを脱いだまんまの格好だ――俺は居心地の悪さに身をよじったけど、最初から俺に快適さを求める権利なんてありはしない。
 腹に回された手は、何の遠慮もためらいもなく、俺のはいていたハーフパンツの中に忍び入ってきた。
 その手が、下着の上から俺の形を確かめるように動く。
「や、めろ、変態っ」
「やだね」
 暴れようとしたら、強めに握りやがった。この鬼畜野郎は。
「あっ、ぐっ」
「おまえ、これを握られたままで抵抗できると思うなよ」
「このっ……」
 言葉が出てこなくて、俺は目をつぶって歯を噛み締めた。
 俺の抵抗がやむと、高岡の手はまた愛撫するような動きに変わった。
 あいたほうの手が俺の腹をたどり、唇が耳に這わされる。
「そんな緊張するなよ。大人しくしてれば、気持ちよくさせてやるから」
 耳元でささやかれて、その勝手な言い分にキレそうだったけど、俺は黙って男の手に身をゆだねた。
 不思議と男に触られてるって嫌悪感がなくて、むしろクーラーで冷えた身体に手のひらの熱が気持ちよく、俺って実はそっちのケがあったのかと、違うことでまでへこみそうになった。
 巧みな高岡の手に、だんだんと股間に熱が集まり始めて、俺は呪文のように『オナニーと一緒、オナニーと一緒』と馬鹿なことを考えていた。だって、自分以外の男の手で感じるというのは、あんまり楽しい現実じゃない。
「ここ、濡れてきた?」
「んっ」
「うん? どうした?」
 布越しに、先端のあたりをくじられて、思わず腰が跳ねた。わかっているくせに、しれっと『どうした?』なんぞと訊く高岡が恨めしくて、拘束されてる両手でその手をどけようとしたけれど、いきなり強くしごかれて動きが止まってしまった。手錠の鎖が、むなしく音を立てる。
「あ、やめっ、ん、んぁっ」
 ひとしきり俺を翻弄して、俺がイキそう?な気分になった途端に、高岡は扱くのをやめて、ぐいっと豪快に俺のハーフパンツと下着とをずりさげた。
「わりとでかいよな」
「み、見るなよ!」
「なんで」
 勃ったものをまじまじ見られて、かぁっと顔が熱くなるのがわかった。勃たせたの、こいつなのに。
「イキたい?」
 耳に注ぎ込まれるひと言ひと言が、愛撫のように俺をおかしくさせる。俺のは、持ち主の意思とは無関係にすっかりやる気で、高岡にじかに触れられると、期待で震えた。正直、なんでもいいからとりあえずイッときたい状況だった。
 高岡はふっと笑った。
「ま、最初は普通にな」
「なに……」
 何を言われたのかわからなくて問い返そうとしたとたん、俺のよりひとまわり大きい手が俺を包み込み、終わりを促すように強く動き始め、俺はこぼれそうになった喘ぎを飲み込んだ。
 そして、高岡の視線と、その熱を感じながら、俺は大きく身体を震わせ白濁を吐き出した。


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